【エターナルにならない】RPGツクールGB・GB2で作る簡単レトロゲーム開発の秘訣【謎解き・脱出・RPG】

歴代『RPGツクール』シリーズの中で、一番手軽でシンプルに作れるのが、『RPGツクールGB』とその2作目の『うちゅう人田中太郎でRPGツクールGB2』。

携帯ゲーム機・ゲームボーイカラーだからこその無駄のないシンプルさでありながら、一般的なJRPGなら今でも十分作れる使いやすさを併せ持っています。

ゲームボーイなので、今のツクールのようにパソコンに向かってガッツリ開発!とはいきませんが、その代わりにポチポチとゲームボーイを操作していつでもどこでも、ちょっとしたスキマ時間に少しずつゲーム制作を進められるのは、今のツクールにはない楽しさがあるんです!

現代の開発ツールは多機能すぎてしまう問題

現代の開発ツールやPC・スマホの環境というのは『多機能・美麗グラフィック・大容量こそ正義』という思想で作られています。
表現力が向上するメリットがある反面、開発者にとってはデメリットになることもあります。

  1. 多機能だということは、それだけ学ぶべきことが増えます。構造が複雑になります。
  2. 大容量だということは、たくさんのデータや素材を作らなければいけなくなります。
  3. 多機能・大容量だということは、たくさんのことを決めなければならなくなります。

そのため、何かいいアイデアが思いついても、始めるための腰が重くなり、頑張って続けてもエターナルという未完成の挫折、未完成だから自信を喪失する、モチベーションが下がるという悪循環におちいりがちに。

現代の開発環境は初心者開発者にとっては優しくないのではないかと感じています。

これらの問題を一気に解決してくれるのが『RPGツクールGBシリーズ』なのです。

ツクールGBは"何でもできないから"完成しやすい

アイデアをゲームに変えていく思考プロセス

大きく、4つの工程で進めていきます。

  1. ゲームアイデアの素材集めをします。
  2. ゲームの構成・プロットを考え、物語にします。
  3. 物語をシナリオ形式に変換していきます。
  4. RPGツクールGBでイベントとして実装していきます。

①ゲームアイデア 〜思いつかないを脱却する〜

『誰が』の決め方

『何を』の決め方

『どこで』の決め方

②ゲーム構成・プロット 〜4つを基本に選別する〜

③ゲームシナリオ 〜セリフでイメージを固める〜

■文章プロットの例
 ゴート城につくと、城門は二人の兵士によって守られていた。
 一人は自らの仕事の意味をまったく理解しておらず、もう一人は仕事熱心な男。
 私は厄介な男が城門から離れていくのを、今か今かと心待ちにしていた。

これを以下のようなシナリオ形式のテキスト表現に変換していきます。

■シナリオメッセージ変換の例(16文字 x 4行)
 4つのパターンを描いてみました。
 それぞれの表現でそのシーンの意味が変わるのが面白いポイントです。

▼パターンA
【オープニング】
◯ゴート城
   城門の前に立っている二人の兵士。
   城門から離れた場所に主人公が隠れている。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
もんばん「あ〜 こんやも ひまだな
 たっているだけなのも つらいな
−−−−−−−−−−−−−−−−
 「なにも おこらないのに
 なんで みはり するんだろうな
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
へいし「オレ は むこうを
 みてくる
−−−−−−−−−−−−−−−−
「しっかり しごと しろよ

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

▼パターンB
【オープニング】
◯ゴート城
   城門の前に立っている二人の兵士。
   城門から離れた場所に主人公が隠れている。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
へいし「おい! また さぼってる
 のか?
−−−−−−−−−−−−−−−−
もんばん「ちがうよ... つまの びょうき
 が しんぱいで...
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
へいし「...そうか。 オレが みてる
 いってこい
−−−−−−−−−−−−−−−−


◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

▼パターンC
【オープニング】
◯ゴート城
   城門の前に立っている二人の兵士。
   城門から離れた場所に主人公が隠れている。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
べテラン「きょうで この しごと
 やめるんだ
−−−−−−−−−−−−−−−−
しんじん「え? なんで?

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
べテラン「むすこが うまれるんだ

−−−−−−−−−−−−−−−−
ベテラン「あんぜんな しごとに 
 つきたくて
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
きょうが さいご の けいび だ

−−−−−−−−−−−−−−−−


◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

▼パターンD
【オープニング】
◯ゴート城
   城門の前に立っている二人の兵士。
   城門から離れた場所に主人公が隠れている。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
もんばん「むかし この しろで
 むすめ と であったんじゃ
−−−−−−−−−−−−−−−−
へいし「また そのはなしか?
 けいびに しゅうちゅう しろよ
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
もんばん「うつくしい むすめだが
 ためらいなく おうをきりすてた
−−−−−−−−−−−−−−−−
へいし「いつの はなし だ?

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
 そんなこと おぼえている
 のは おまえさんだけ だろうよ
−−−−−−−−−−−−−−−−
もんばん「いま その むすめ が
 しろの あるじ なんじゃよ...
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

メッセージ上限数(GB)

■メッセージ表示の仕様
 ・1個のメッセージで4行分登録ができ、2行分ずつ表示される。
 ・1行は16文字まで入力できる。

■各マップにおけるメッセージ最大個数
フィールド:60個まで
  おしろ:60個まで
   まち:60個まで
   むら:60個まで
ダンジョン:30個まで ※ダンジョンのみ少ないので注意。
 よく使う:30個まで ※頻繁に表示するメッセージを登録できる機能。ここに登録したものは全マップで使える。

④RPGツクールGB制作のコツ

実装の基本的な流れ

■RPGツクールGBでの開発の基本
 ①『マップ』を作る
 ②『メッセージ』を作る
 ③『イベント』を作る
 ④『テストプレイ』をする

 が基本。①〜④をゲームシナリオのシーン数の分だけ繰り返し、ゲームを作っていく。

▼【移動】主人公を動かせるようにするまで
 ①「マップ」でプレイヤーキャラクターを置くマップを作る。
 ②「しゅじんこう」でプレイヤーキャラクターの名前を作る。
 ③「しゅじんこう」の「パーティーのせってい」でゲーム開始時の初期位置を決める。
 ④エディター画面でスタートボタンを押し、テストプレイを開始する。
 「はじめから」を選ぶと、プレイヤーがマップを動けるようになる。

▼【話す】主人公がNPCと話せるようにするまで
 ①「メッセージ」で町の人のセリフを追加する。
 ②「イベント」で町の人のイベントを作成する。
 ③イベント内容で追加したメッセージを表示する。
 ④テストプレイをすると、プレイヤーがいるマップにNPCがいて話せるようになる。

▼【戦う】主人公がボスと戦うようにまで
 ①「メッセージ」でボスのセリフを追加する。
 ②「モンスター」でボスのデータを追加する。
 ③「イベント」で、マップにボスのイベントを作成する。
 ④イベント内容で追加したメッセージを表示し、「てきとたたかう」とボスのデータを設定する。
 ⑤テストプレイをすると、プレイヤーがいるマップにボスと戦えるようになる。

イベントを中心に考えること

はじめはアドベンチャーを作り、次にRPGに進化していく

ゲームの進行管理方法は?

スイッチ管理表を作る

『コピー・貼り付け・移動・せいとん』操作に注意!

最大個数の仕様を把握すること

サンプルゲームをエディットしてみる

⑤自動イベントの作成方法

自動イベントを作る基本

起動イベント

イベントの状態管理

1ページ目の役割

2・3ページ目の役割

4ページ目の役割

永続的なイベントの消し方

BGM演出は非常に重要

オープニングイベントの作り方

■オープニング自動イベントの作り方
 RPGツクールGBのサンプルゲーム『ノーブルキャット』のデータを見ていきます。

①初期位置の確認
・エディット⇒「しゅじんこう」を選ぶ。
・パーティーの設定⇒「パーティーのしょきいち」に表示されているマップ名とフロア名を確認する。
・エディット⇒「イベント」を選ぶ。
・「パーティーのしょきいち」に表示されているマップ名とフロア名を開く。
・「!」マークが表示されたイベントがあるので、それを開く。
 これがゲーム開始時に一番初めに実行されるイベント。

②マップA(暗転マップ)でイベント1
   ページ:1
グラフィック:0(透明)
 開始タイプ:自動スタート
イベント内容:メッセージ(主人公の名前を決めてください)
       主人公の名前をいれる
       場所移動(マップBへ)
       BGM変更
       ニーナをくわえる
       ロコをはずす
       
▼マップBでイベント1
   ページ:1
グラフィック:0(透明)
 開始タイプ:自動スタート
イベント内容:パーティー左向く
       ゲームスイッチ1をオン
       イベント消える

   ページ:2
    条件:スイッチ1オン
グラフィック:0(透明)
 開始タイプ:ふれたとき
イベント内容:なし

⑥知っておくと役立つ開発テクニック

始めに主人公の名前を作る

パーティーメンバーの増減で装備がはずれることに注意

『透明』主人公はオープニング・エンディング・回想シーンで役に立つ

『場所移動』は簡単に制約突破できる裏技コマンド

暗転マップの暗さの違い

⑦RPGツクールGB2の仕様詳細

スイッチ

  1. ゲームスイッチは最大200個まで使える。
  2. テストプレイ時にセレクトボタンを押すと、スイッチの状態をリアルタイムに確認できる。
  3. GBには、IF文のような条件分岐判定を行うイベントコマンドはないので、スイッチを使うのは、イベントの起動条件でのみ。

メッセージ

  1. メッセージの移動(コピー&はりつけ・せいとん)はできるが、メッセージを移動しても既に作ったイベントで呼び出したメッセージには自動反映されないので注意。メッセージの移動を行った場合、イベントで呼び出しているメッセージも手動で変更していかなければならない。
  2. キーワードは最大5文字まで、10個までしか登録できない。

マップ

  1. マップ制作は、マップパターンを選び繋げていく方式。マップタイルチップを1マス単位での編集はできないが、だからこそ簡単にマップを作れるメリットもある。
  2. 1つのマップパターンサイズは『縦9マス x 横10マス』。
  3. マップパターンを選び『6 x 6』のマップに配置し、マップを作っていく。
  4. つなぐ』コマンドを使うと、既存のマップに合致しているものだけが選べるので、非常に便利。通路のつながりチェックなどをする必要もない。
  5. 1列1行に表示できるキャラクターは6体まで。

セーブ

  1. セーブは3つまでできる。サンプルゲーム(サンプル)・作成したゲーム(ユーザー)・テストプレイ(テスト)で共通。
  2. エディットの『ゲームデータクリア』をすると、セーブデータも消えてしまうので注意。これはテストプレイのセーブデータだけでなく、サンプルゲームやユーザーゲームのセーブデータも消えてしまう。

コピー&はりつけ操作の仕様

■コピー貼り付けの仕様
 ・コピペ機能は、編集するデータによって使えたり使えなかったりするので、やはり、事前に一通りの内容を決めておいた方が手戻りなく制作ができる。

▼マップ制作
 ・マップのコピー貼り付けはできない。

▼メッセージ制作
 ・メッセージは異なるマップ間でもコピー貼り付けができる。
 ・すべてのメッセージを作って、一通り整理してから、イベント制作をするのが理想ではある。
 ・しかし、理想通りには制作は進まない。

▼イベント制作
 ・異なるマップ間でのイベントのコピー貼り付けはできない。
 ・イベントのコピー貼り付けができるのは同じマップ番号のものだけ。

▼データ制作
 ・「しゅじんこう・モンスター・アイテム・まほう」のコピペはできない。

⑧RPGツクールGB・GB2をプレイする方法

ゲームボーイ本体とRPGツクールGBのソフトが必要です。

【必須】RPGツクールGBソフト

ゲームボーイでRPGツクールは、2作出ています。
どちらも操作方法はほとんど変わりません。2の方が若干使い勝手が良くなっています。

【必須】ゲームボーイ本体

ゲームボーイ本体は『ゲームボーイカラーかゲームボーイアドバンスかゲームボーイアドバンスSP』のどれかを選んでください。
縦持ち型よりも横持ち型の方が操作はしやすく、二つ折りにできてゲームボーイアドバンスもプレイできるゲームボーイアドバンスSPは特に人気です。

初代ゲームボーイやゲームボーイポケット・ゲームボーイライトでもRPGツクールGBは使えますが、これらはどれも白黒液晶画面なので見づらいと思います。

【お好みで】ターボファイル

ターボファイルがなくても、RPGツクールGBカートリッジに作ったゲームデータは保存できます。
ゲームボーイとつなぐターボファイルGBという周辺機器があると、作ったゲームをさらにターボファイルにたくさん保存できます。

【お好みで】関連書籍

書籍は、RPGツクールGB公式ガイドブックの一冊のみです。
RPGツクールGB2の公式ガイドブックは出ていません。

イベントの作り方サンプル、データ一覧、ゲーム開発管理シートなども載っており、RPGツクールGBで作るなら持っておくと役立つ一冊です。

⑨RPGツクールGB2の裏技

■追加の顔グラフィックを使う隠しコマンド
 ゲーム エディット
サンプル つうしん
せってい チュートリアル

が表示されているメニュー画面で

・『上上右右下下左左スタートセレクト』を押す。
・キュイーンと音がなる。
・エディットを選ぶ。
・追加の顔グラフィックが使えるようになったと表示される。

■顔グラフィックが追加できるプロマイドの場所
 サンプルゲームの以下の場所にある。

 ・味の塔 3F
 ・洞窟   B3F
 ・天の塔 3F
 ・研究所 B2F

⑩参考リンク

エターナルの回避にはRPGツクールGBがおすすめ

RPGツクールで制作しているゲーム制作者なら、必ず一度は通るのがゲーム制作が未完成で終わってしまうエターナル状態。RPGツクールGBは小さいからこそ、作るための労力が少なく、エターナルを避けやすいツクールシリーズです。

他のRPGツクールシリーズを使ってやってみたんだけど、挫折した、エターナルになった

という人は、RPGツクールGBからRPG作りを始めてみてはどうでしょうか?

『あれもできる・これもできる』という多機能性は、開発者が『あれもやらなきゃいけない・これもやらなきゃいけない』になりがちです。顔グラや音声は、あれば表現力が高まるものの、その分、開発者が作らなければいけない素材、決めなければいけないことがキャラクターの人数分だけ増えていきます。

しかし、RPGツクールGBのようにできることが少ない環境では、その環境でできることだけに集中ができます。小さくても、一度完成までできてしまえば、ゲーム全体をより理解できるようになるし、何よりも『一つ作れた!という自信や成功体験』を手に入れることができるのです。

RPGツクールGBは小さな試作開発に最適!

たとえ小さくても完成できているということは、ストーリー作りもキャラ作りもセリフもシーンイベント実装もゲームに必要なものがすべてできていることを意味します。

その時、あなたは既にRPGツクールGBで作った既存作品を持っているわけですから、ストーリーもイベントの実装方法も理解しています。
バトルのある作品なら、バトルのバランス調整も終わっているでしょう。

そうやって、ひとつできたら、ゲームボーイで作った試作品をプレイしてみながら、その作品を他のRPGツクールに移植すればいいのです。何度もエターナルになってしまうときは、より小さく始めて、少しずつ大きくしていくことを意識してみることが大切です。